- きる
- I
きる【切る・斬る・伐る・截る】※一※ (動ラ五[四])(1)刃物などを使って一続きのものを分離させる。 断ち分ける。 《切・伐・截》「大根を包丁で~・る」「爪を~・る」「型紙どおりに布地を~・る」「志賀の山いたくな~・りそ/万葉 3862」〔「伐」は木をきりたおす時, 「截」は布・紙などをきる時に用いる〕(2)刃物などで自分の体の一部を傷つける。 意図的な場合と, 不注意による場合とがある。
「腹を~・って死ぬ」「ナイフで手を~・る」「すすきの葉で指を~・る」
(3)刃物で傷つけ殺す。 斬り殺す。 《切・斬》「罪人を~・る」「敵兵を~・る」(4)塞がっているものや閉じているものをあける。 《切》「封を~・る」「口を~・る」(5)空間的に連続しているもの, 流れているものを分断する。 《切》「船が波を~・って進む」「肩で風を~・って歩く」「道を~・る」(6)話や文章を続けないで区切りをつける。 《切》「この文は長すぎるから, ここで一旦~・った方がいい」(7)電流を止める。 《切》⇔ いれる「電源を~・る」「電灯のスイッチを~・る」(8)関係やつながりをなくす。 《切》⇔ むすぶ「あの人とは縁を~・りたい」(9)時間的に継続しているものを中断させる。 打ち切る。 《切》「電話を~・る」「彼はそこで言葉を~・った」(10)本体やグループから外す。 取り除く。 《切・斬》「六〇点以下の者は~・る」「反対派を~・る」(11)手術をして取り去る。「胃を~・る」
(12)ぬれた物から振ったりして水分を取り去る。 《切》「洗濯物の水気を~・る」「揚げ物の油を~・る」(13)ものごとを作り出す。 出現させる。 《切》(ア)一部分を掘りとって作る。「溝を~・る」「ねじを~・る」「炉が~・ってある」(イ)手を動かして形を作る。 「十字を~・る」(ウ)断定的な言葉を発する。 「たんかを~・る」「しらを~・る」(エ)目に立つような所作をする。 「見得を~・る」「とんぼを~・る」
(14)日時・数量などに限定をつける。 《切》「日を~・って金を貸す」「人数を~・って参加を受け付ける」(15)ものごとに決着をつける。「未だ勝負も~・らぬに/今昔28」
(16)数値が, ある目安・限界よりも小さくなる。 割る。 《切》「一〇〇メートル競走で一〇秒を~・る」「上昇率が一〇パーセントを~・る」(17)ある動作・行動を起こす。 始める。 《切》「スタートを~・る」「伝票を~・る」(18)乗り物の進行方向を変える操作をする。 また, それによって進行方向を変える。 《切》「右にハンドルを~・る」「カーブを~・る」(19)(比喩的に)欠点をあばいて攻撃する。 糾弾する。 《切・斬》「世相を~・る」「官界の腐敗を~・る」(20)テニスや卓球で, ボールが強く回転するように打つ。 カットする。 《切》(21)囲碁で, 相手の石のつながりを断つ。 《切》(22)トランプやカルタなどで, 札の数がそろったりしないようにまぜあわせる。 《切》「札をよく~・ってから配る」(23)トランプで, 切り札を使って勝負をつける。 《切》「切り札を~・る」(24)(動詞の連用形について)《切》(ア)量的な限界点までその運動をする。 …しおえる。「厚い本を読み~・る」「あり金を使い~・る」「ドーバー海峡を泳ぎ~・る」(イ)運動が完全にその終局点に到達する。 すっかり…する。 「ほとほと困り~・る」「疲れ~・った表情」
(25)(近世, 竿金(サオガネ)などを必要なだけ切って使ったことから)(ア)両替をする。「和尚が小判が~・つてもらひたいとおつしやる/歌舞伎・男伊達初買曾我」(イ)気前よく金を払う。 「鉢植の梅に一朱を~・つて買ひ/柳多留 101」
〔「きれる」に対する自動詞〕‖可能‖ きれる※二※ (動ラ下二)⇒ きれる︱慣用︱ 口火を~・札片(サツビラ)を~・自腹を~・堰(セキ)を~・手を~・火蓋(ヒブタ)を~・見得(ミエ)を~・身銭(ミゼニ)を~切った張った⇒ きったはった(独立項目)切って落と・す(1)勢いよく切って下へ落とす。(2)⇒ 幕を切って落とす(「幕」の句項目)切って捨(ス)・てる思い切りよく切り捨てる。切って取・る(スポーツ・勝負事などで)鮮やかに打ち取る。「三振に~・る」
切っても切れない縁を切ろうとしてもどうしても切れない。II「~ない親子のきずな」
きる【着る】(1)身につける。 (ア)衣服を身につける。 まとう。「晴れ着を〈きる〉」「着物を〈きる〉」「シャツを〈きる〉」(イ)袴・足袋などをつける。 はく。 「下衆の紅の袴〈き〉たる/枕草子 45」(ウ)帽子・笠・兜などをつける。 かぶる。 「帽子を〈きる〉」「笠も〈き〉ず出でつつそ見し雨の降らくに/万葉2681」
(2)引き受ける。 身に負う。「他人の罪を〈きる〉」「恩ヲ〈キル〉/ヘボン」
〔「着せる」に対する自動詞〕︱慣用︱ 恩に~・笠に~・裃(カミシモ)を~・濡れ衣を~IIIきる【鑽る】石と金を打ち合わせたり, 木と木をこすり合わせたりして, 火を取る。IV「火を~・る」
きる【霧る】(1)霞や霧が立つ。 かすむ。「霞立ち春日の~・れるももしきの大宮所見れば悲しも/万葉29」
(2)目が涙でかすむ。「目も~・りて/源氏(夕霧)」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.